錫器の魅力は銀のように鮮やかで美しい色合いです。エテナは日本古来の錫器にはない金属ならではの光沢も重視した錫製品を作り上げてきています。ただ、錫製品は変色するという話を聞いたことがある方もいらっしゃるでしょう。
銀も丁寧にお手入れをしていないと黒ずんできてしまうことが知られていて、台無しになってしまうのが嫌だから銀製品は諦めたという方もいます。錫製品も確かに変色してしまうことがありますが、原因を理解して簡単な対策をするだけでいつも美しい姿を見せてくれます。
ここでは錫が変色する原因と対策についてご紹介します。エテナはずっと使っていただける錫製品だということもご理解頂ければ幸いです。
変色の原因
錫器が変色してしまう原因は大きく分けると三つあります。金属の器が変色するときに共通している原因なので、他の器を使用するときにも知っておくと役に立つでしょう。
ここでは金属の色が変わってしまう三つの原因について詳しく解説します。
長期間使用することによる変色
長期間にわたって使用していると錫が変色してしまうのは仕方がありません。使い始めたときには銀白色で美しい姿をしていても、だんだんと輝きが薄れてきて鈍い光を帯びるようになります。
微妙に黄色味がかかったり、灰色がかったりしてきてしまう傾向があるのは確かです。
この変色の原因は実は多岐にわたっています。錫の表面は酸化被膜に覆われていて、錫製品が劣化しないようになっています。酸化被膜は錫の本来持っている色合いと同じではありません。
酸化被膜自体はほぼ無色透明ですが、被膜ができる過程で不純物を取り込んで色づいてしまうことがあります。人の手指や食べ物などに由来する脂が取り込まれて黄色や灰色になるのが典型的です。
酸化被膜はだんだんと厚みを増していくため、長期間にわたって使用しているとだんだんと色が濃くなってきてしまいます。
飲み物を入れたまま放置してしまう
短い期間しか使っていないのに錫器が変色してきてしまう原因として典型的なのが、飲み物を入れたまま放置したことです。錫器でなくても器に飲み物を入れていると着色してしまうのを経験したことがあるのではないでしょうか。
例えば、陶磁器に緑茶を入れてゆっくりと飲んでいると、だんだんと茶渋が付いてきてしまいます。陶器のコーヒーカップやステンレス製のタンブラーにコーヒーを入れて飲んでいると、コーヒー色に染まってきてしまうでしょう。
色のついている飲み物には色素が含まれているので、ずっと入れたまま放置してしまうと変色の原因になります。錫器も例外ではなく、金や銀などの他の金属でも同じです。
飲み物を入れる器として使う限りは避けられない問題でしょう。
お酢やレモン汁などの酸性のものを入れたままにしてしまう
瞬く間に器が変色してしまったというケースで多いのが酸性のものを入れたままにしたことです。金属の器ではよくある現象で、お酢やレモン汁などの身近な酸性の液体を入れていたために変色してしまっているケースがしばしばあります。
健康飲料としてお酢を飲む人も多くなってきたので切実な問題かもしれません。酸性のものを入れたままにすると変色してしまうのはステンレスや鉄、銅などの金属でも起こる現象です。
酸の影響によって金属が溶かされてしまうのが原因になっています。
ただ、お酢などを入れたらすぐに変色してしまうほど急速な勢いで金属が溶けるわけではありません。錫も数分の間で酢に溶けてしまうようなことはなく、何時間も経過すると変色してくるという程度です。
数日すると黒色に変化してしまいますが、酢を注いですぐに飲んで洗ってしまえば変色の大きな原因にはなりません。 ただ、酸性のものは多かれ少なかれ錫器を傷める要因になります。
できれば錫器で飲むのは避けた方が良いでしょう。
変色=サビではない
金属の器が変色するとサビではないかと思う方もいらっしゃいます。ステンレスや鉄は赤サビによって褐色になり、銅は緑青の発生によって青から緑がかったようなサビによる変色を起こします。
錫製品が変色したときにもサビてしまったと考えるのはもっともなことでしょう。 ただ、錫の変色はサビではありません。その理由と、実際に起こっている錫の変色の原因について詳しく見ていきましょう。
変色原因がサビではない理由
錫製品の変色原因がサビではないのは、そもそも錫があまりサビないからです。鉄や銅などのようにサビやすい金属もたくさんあります。
しかし、逆に金のようにサビが発生することはあり得ない金属もあることをご存じの方もいるでしょう。
錫もサビにくい性質を持っている金属です。誤解を招かないために錫は金のように全くサビない金属ではないとあえて強調しておきますが、サビが発生したとしても変色することはありません。
サビが出てきたとしても不快な金属臭が出てきたり、健康被害をもたらす原因になったりすることもありません。
サビと言うとイメージが悪いですが、サビは金属が酸化してできたものです。錫の場合には酸化錫ができます。
酸化錫は無色に近い灰色をしていて、化粧品にも用いられている安全性の高いものです。錫製品の表面を薄く覆って酸化被膜を形成し、錫製品本体を保護する役割も果たしています。
鉄のサビは変色の原因になるだけでなく、金属臭などの問題もあるのは確かです。しかし、錫の場合には色にもにおいなどにも問題がなく、むしろ錫器の長持ちさせる役割を果たしています。
色素沈着による変色
錫が変色する原因は色素沈着のケースが多くなっています。飲み物を入れたまま放置すると着色するのは色素成分が器の表面に付着したからです。
金属と親和性が高い色素も多いので、長く使っていると色素沈着が起きて洗ってもなかなか色が落ちなくなってしまいます。
色素の種類によって沈着しやすさにも違いがあります。コーヒーやワインの色素は沈着しやすい性質があるので注意が必要です。
ジュースなどの清涼飲料水には天然由来の成分だけでなく、着色料を用いていることもよくあります。着色料の中にはやはり吸着性が高くて変色を起こしやすいものもあるので気を付けましょう。
色素沈着を防ぐには飲み物をずっと入れっぱなしにせず、飲み終わったらすぐに洗い流すのが効果的です。普段から飲み終わったタイミングで少なくとも水洗いはしておくのがおすすめです。
傷や汚れによる変色
錫製品の変色の原因として傷や汚れも大きいことが知られています。錫器を使用しているとだんだんと傷がついてきてしまうことは避けられないでしょう。
飲み物を入れているだけなら傷がつかないと思うかもしれませんが、洗っているときに擦ると少しずつ傷がつきます。他の食器と接触したときには大きな傷がついてしまうこともあります。
このような傷が色合いを変えてしまい、光沢が鈍くなって変色したという印象を受けることもあるでしょう。
しかし、微細な傷がついていると汚れが溜まりやすくなって着色することあります。目に見えないような小さな傷に埃が入り込んだり、着色物質が付着したりすると簡単には落ちません。
汚れはきちんと洗い流していると思っていても、微細な傷があるせいで汚れが落ちず、錫製品に色がついてしまうことがあるのです。 錫製品を大切に扱うのが傷をつけないための基本です。
汚れも傷がほとんどなければ洗うだけで落ちていきます。大切な器として丁寧に使っていきましょう。
変質による変色
錫が変質してしまって変色するケースもあります。お酢やレモン汁などの酸性のものをずっと入れたままにしたときには、錫器の表面が変質してしまいます。
変質によってできた物質は表面に吸着されやすいので、水洗いをしただけでは落ちないことがほとんどです。
錫は光や空気による変質はあまり起こらない点では安心です。しかし、酸性には他の金属と比べて強いわけではないので注意しましょう。
お酢などによる変質が原因でもお手入れの仕方によっては美しい姿に戻すことができます。ピカールなどの錫にも使える研磨材を使って表面を磨き上げるのが効果的です。
エテナの輝かしい光沢を取り戻すのにもうってつけの方法なのでぜひ覚えておいてください。
日々のお手入れが重要
錫製品できるだけ美しいままの姿にしたいと思うのはもっともなことです。錫は使い込むことで味が出るとよく言います。
表現の仕方の問題で、変色によって味が出ているというのも事実です。ただ、新品の錫器の美しさをまずは長く楽しみ、それからだんだんと変化を味わっていければ生涯にわたって錫器の醍醐味を堪能していけるでしょう。
錫の美しさを保つには日々のお手入れが大切です。細かいお手入れの仕方や困ったときの対処の仕方は以下のページで詳しく説明していますので、ここではお手入れで特に大切なポイントに絞って紹介します。
普段から何に気を付けていれば大丈夫なのかを確認しておきましょう。
丁寧に洗って乾かすだけでも美しさを保てる
錫の変色を防ぐには器を使った後には丁寧に洗って乾かすだけで十分です。当然のことと思う方もいらっしゃいますが、習慣化していないと大変と感じる場合もあります。
錫器は中性洗剤を使って洗った後、水できれいに洗剤を洗い流し、柔らかい布で拭いて乾かせば大丈夫です。飲み物に含まれている色素が沈着しないように、使い終わったらすぐに洗うようにしましょう。
中性洗剤を使うことで色素を取り除きやすくなります。水洗いだけでは汚れも落ちにくいので、必ず中性洗剤で洗いましょう。
また、きちんと乾かさないと水垢が気になってしまいがちです。金属は濡れたままにしておくと変質しやすいので、拭いてから乾かす習慣を作るのがおすすめです。
傷つけないように大切に扱おう
錫は金属の中でも軟らかい性質を持っています。ステンレスや陶磁器のような硬さを持っているわけではありません。
ステンレス製の器や陶磁器、ガラスの製品などにぶつけてしまうと傷がつきやすいので気を付けましょう。
錫器を洗うときには他のものと一緒にせずに、錫器だけを洗うのがおすすめです。また、食器洗浄機を使うと他の食器と接触して傷ついてしまうリスクが高いので、手洗いをするのが大切です。
食器洗浄機の洗剤には研磨材が入っていることも多く、錫器に微細な傷をつけてしまう原因になります。手間を惜しまずに錫器は一つずつ大切に洗うようにしましょう。
色が気になったらきれいにお手入れしよう
もし錫器が変色してしまったとしてもお手入れをすれば美しい姿になります。変色した原因によってどのようなお手入れをするのがベストかは異なりますが、先ほどご紹介したように変質したときには研磨材で磨くのが効果的です。
傷が原因のときには細かい研磨材で磨き上げると美しくなる場合がほとんどです。
汚れや着色物質が原因のときには練り歯磨き粉や重曹を使って磨く方法が適しています。特に食べ物や飲み物由来の着色物質を落とすには練り歯磨き粉が有効です。
普段から使っている歯磨き粉で大丈夫なので、色が気になったときにはきれいに磨き上げてみましょう。 このようなお手入れによって今までにはなかった味わいが出てくることもあります。
長年にわたって錫器を愛用している人が多いのは、お手入れをしているうちに深い味わいが出てくるからです。お手入れはただ錫器を美しくするだけでなく、錫ならではの醍醐味を引き出すことにもつながります。
気になったことがあったときには丁寧に磨き上げて、魅力のある姿に仕上げていきましょう。
まとめ
錫が変色はサビによるものではなく、表面に付いて落ちにくくなった色素や汚れが主な原因です。錫器は長持ちするので一生使っていくことができますが、長年使っているとだんだんと色が変わってきてしまいます。
また、使い方によっては着色しやすくなるので、普段から色が付かないように気を遣うことは大切です。この点はステンレスなどの他の金属の器でも同じことで、変色を防ぐ上ではどんな器を使うときにも意識しておきたいポイントです。
錫はいつもお手入れをしていれば変色が起こりにくく、もし色が気になってしまったとしても磨き上げると美しくなります。お手入れを通して味が出てくるのも錫製品の魅力です。
一生愛していく錫器としてぜひエテナをご検討ください。輝かしい光沢を持つエテナは磨き上げることで極めて美しくなります。お手入れをする楽しみも増えますので、ぜひエテナを手に取っていただければと思います。